テクノロジー

日立三菱水力株式会社の技術についてご紹介します。

一流の技術を駆使して、運用性や環境性の向上、デジタル化などといったお客さまのさまざまなニーズにお応えします。

研究開発

水車

CFD解析

当社はCFD解析と模型試験による検証により、発電所ごとに適した水車を最適設計しています。ここではCFD解析技術の一部を紹介します。

事例01

全体解析:ケーシング入口からドラフトチューブ出口までの水車の全流体構成要素を含む大規模CFD解析。

全体解析の解析対象

事例02

非定常気液二相流解析:ドラフトチューブ内で発生するらせん渦の振れ回りを模型試験と同等レベルで模擬。

CFD解析

解析領域

模型試験

模型水車

※N:ランナ回転速度(秒-1)

事例03

粒子法:模型試験で観察が難しいペルトン水車ランナバケットからの流出流れを解析。

CFD解析(粒子法)

模型試験(観察)

発電機

Thermo Elastic Hydro Dynamic解析プログラム

当社はThermo Elastic Hydro Dynamic(TEHD)と呼ばれるスラスト軸受の解析プログラムを用いて、スラスト軸受を設計しています。
TEHDは以下の状態量を連成して解析し、従来よりも高い精度でスラスト軸受の性能を確保します。

TEHDの特徴

1 油膜の流れ場や温度場を3次元で解析(3次元のエネルギー方程式)

2 油膜からスラストパッドへの熱伝達

3 スラストパッド内の熱伝導(FEM(有限要素法))

4 スラストパッドの熱変形と荷重変形(FEM)

スラストパッド表面温度の計算値と実測値結果

油膜厚さの計算値と実測値結果

PEEK樹脂軸受

水車発電機における軸受は、発電機の構成部品の中でも、最も信頼性が要求される部位の一つです。その一方で、近年では軸受の低損失化および補機の削減等による保守簡素化のニーズが求められています。当社では、これらのニーズに答えるべく、従来のホワイトメタルに比べて耐強度、耐熱および耐摩耗に優れたPEEK(Poly-Ether-Ether-Ketone)樹脂軸受を開発し、採用しています。

PEEK樹脂材の特徴

1 機械的強度に優れている

2 耐熱性に優れている

3 自己潤滑性を有し、耐摩耗性に優れている

4 耐衝撃性、強靭性及び耐疲労性に優れている

5 耐薬品性、耐加水分解性に優れ、濃硫酸以外のものに侵されない

四国電力株式会社本川発電所
PEEK 樹脂スラスト軸受

可変速技術

地球温暖化対策の観点からCO2排出量削減をめざし太陽光、風力などの変動再エネ電源の導入が進んでいます。しかし、これら変動再エネ電源の増加に伴い、日中の余剰電力の発生、天候による短時間での出力変動、日の出日没に伴う太陽光発電の急増急減などといった電力系統への影響が増大し、電力系統の安定化が課題となっています。

この課題を解決する手段として当社が世界に先駆けて開発した可変速揚水発電システムが活用されています。当社は1987年に世界初の実証試験を行って以来、30年以上にわたって日本国内および海外へ可変速揚水発電システムを提供しており、可変速揚水発電用ポンプ水車、発電電動機は高落差、大容量、高回転速度の領域まで対応しています。

可変速揚水発電システムは、周波数変動に追従可能であることから周波数調整力の確保、さらに有効電力・無効電力の独立・高速制御を利用して系統安定度の向上に生かされています。また、可変速揚水発電システムの広い運転範囲を利用した揚水運転での負荷周波数制御(LFC)実現による運用の経済性向上(火力機の焚き増し抑制)により、CO2排出量の削減も可能にしています。

可変速機は定速機よりも速い負荷変動に追従して系統周波数安定に貢献します。

※GF:ガバナフリー
 LFC:負荷周波数制御
 ELD:経済負荷配分制御

可変速機は定速機よりも無効電力の追従性がよいため、系統電圧の維持に貢献

可変速器

地絡事故により系統電圧が急激に低下した場合、交流励磁の可変速機は通常のAVR機能で界磁電流をほぼステップ状に増加させ、無効電力を補償することで系統電圧の回復に貢献。

定速器

地絡事故により系統電圧が急激に低下した場合、直流励磁の同期機はAVR機能により界磁電流を増やそうとするが時定数が長く短時間での無効電力の補償が困難。

※この図は、可変速機の特徴を説明するための模式図です。​

関西電力株式会社 奥多々良木発電所
可変速揚水発電用 350MVA 発電電動機 回転子の吊り込み

北海道電力株式会社 高見発電所
可変速励磁装置

環境配慮技術

ハイブリッドサーボ

ハイブリッドサーボは双方向ポンプにより油圧シリンダを直接加圧する駆動システムです。ハイブリッドサーボの採用により、従来の油圧操作式では必要であった圧油装置、圧油タンク、空気タンク、空気圧縮装置等の付属装置が不要となり、発電所内の省スペース化が可能となります。
又、操作油圧を高圧化する事により、設備の小型化と操作油量の低減を実現し、環境負荷の低減にも寄与します。

ハイブリッドサーボの全景

水潤滑セラミックス軸受

水潤滑セラミックス軸受は従来の油潤滑軸受に比べて以下のような点で優れています。

1 潤滑剤は河川水を使用可能

2 補機(冷却水ポンプ、冷却器、等)が不要

3 油流出の可能性が無く、環境対策が不要

20年以上の運転実績を有しており、高い信頼性を確保しています。

水潤滑セラミックス軸受の構造

複動電動サーボ

水車ガイドベーンの開閉操作装置は従来油圧操作式サーボモータを採用していましたが、環境汚染防止、保守の簡素化などの観点から電動式のサーボモータを採用する設備が増えています。電動式サーボモータの採用により、油圧操作式では必要となる圧油ポンプ、圧油タンク、空気圧縮装置、および付随する配管類が不要となり保守の省力化を図ることが可能となります。

電動化の可否は電動サーボモータの容量で制約を受けますが、当社は2台の電動サーボモータを同期制御する複動式の電動サーボモータを開発し、従来は電動化が難しかった出力レンジの水車まで電動化が可能となりました。

九州電力株式会社 塚原発電所
複動電動サーボ

東日本旅客鉄道株式会社 千手発電所
複動電動サーボ

DX

水力発電所における保安管理業務の高度化により、お客さまのデジタルトランスフォーメーション(DX)をサポートします。

保安高度化システムのコンセプトとアプローチ​

遠隔監視化・常時監視化​

コンセプト
  • 新しい生活様式に対応
    (いつでもどこでも発電所の状況が手軽に確認可能)
  • 働き方改革へ貢献
    (保守の効率化、時間の有効活用をサポート)
アプローチ
  • ウェブビジュアリゼーション・レトロフィットセンサー(注1)等による発電所の見える化
  • タブレット等スマートデバイス(注2)活用による保守作業の手軽化
  • ロボット・ドローン・IPカメラ等による現地派遣者の代替

注1:レトロフィットセンサーはデジタル化されていないメーターやゲージを画像認識で数値化しコントローラに取り込む装置です。指示針(線形・非線形)のアナログメーター、油面計等の液面ゲージ、7セグメント表示、カウンターなどの読み取りに対応しています。また、マイクで周囲の音と正常音を比較し異常度を出力するタイプもあります。

レトロフィットセンサー

注2:VPN(仮想プライベートネットワーク)等の無線ネットワークで発電所内のコントローラにアクセスし発電機のリアルタイム運転データをモバイル端末に表示します。遠隔地から状態・計測・故障監視が可能となります。また、巡視点検業務への活用や技術伝承ツールとの連係を予定しています。

遠隔監視用タブレット端末

判断内容の客観化・高度化

コンセプト
  • 人が気付かない異常を早期検知し、設備安全確保、補修頻度や規模の低減、計画外停止のリスク低減
  • トラブル発生時の原因究明時間、復旧時間短縮
アプローチ
  • 収集データとAIの連係による予知保全

現場作業の知識集約化

コンセプト
  • 効率的なナレッジ・ノウハウの蓄積と共有
アプローチ
  • 技術伝承ツールの活用による熟練者のナレッジ・ノウハウの可視化および蓄積

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